輪島屋善仁のブログ ”善仁だより”では、日々の工房の様子や商品のご紹介、奥能登の季節の便りなどをお届けしています。皆様からのご意見、ご感想もお待ちしております。


白洲正子さん旧蔵の根来盃

「…荒びた器や焼きものには、何物にも束縛されない自由な天地とすべてのものを生み出す”いのち”が秘められている…」
これは古美術や能に精通し、味わいのある随筆を多数残した白洲正子さんの著書からの一文です。(「器つれづれ」1999年刊 より)

根来盃 オリジナル

そんな白洲さんがかつて愛蔵していたのが、この根来の盃。
(写真は「朱漆『根来』ー 中世に咲いた華」展 図録より)

当社の「優品に学ぶ」シリーズでは、これまでも漆芸史上の名品をいくつか再現してきましたが、今回はこの根来盃に取り組んでみました。天に向かって両手を大きく広げたような直線的で清々しい意匠は、今に伝わる根来の中でも異彩を放っています。眺めていると、戦の多かった中世という時代に生きていくことの峻烈さ、そこからにじみ出る精神の潔さのようなものを感じます。

根来盃 再現

小社が再現したこの杯は、新品の今は時を経た原物の味わいには遠く及びませんが、永くお使いいただくことで生じる塗り肌の磨耗、朱漆の色合いの変化などが自然の風味を醸し出すように、下地塗り工程から吟味を重ねて製作されています。機会がありましたら是非お手にとってご覧ください。

根来盃 洗朱塗 1客 ¥26,000 (税抜)


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「葆光(ほうこう)」とは

以前の記事で、古代中国の思想家・荘子が若い頃に漆園の管理人をしていたことを書きましたが、今回は荘子と漆に関わるかもしれない?話、その2です。

「荘子」斉物論篇には、「葆光(ほうこう)」という言葉が出てきます。「葆光」とは包まれた光、ほのかに内にこもる光、といった意味で、「人間の最上の知は、知らないということを知ることにある」といった文脈の中で、そのような絶対的な境地に達した状態を表すことばとして使われています。

作家の玄侑宗久さんは、荘子がこの「葆光」という言葉を用いたのは、かつて漆園の管理人をしていた経験があるからでは…と書いておられます。

「…『ほのかな光』が、肯定的な意味で『荘子』には頻繁に出てきます。ほのかな光とは、すなわち、漆の艶の特徴でもあります。こうしたことを考えると、荘子が漆園の管理人だったというのは本当なのかもしれません。」
「100分de名著-荘子」NHK出版より

美しく塗られた漆の肌をじっと眺めていると、確かに奥底の方から優しく跳ね返ってくる、闇に深く包み込まれたかのような淡い光を感じます。

人智の最高の境地を、ほのかにこもる光という概念で表した荘子。日本では谷崎潤一郎も「陰翳礼讃」の中で、漆は薄暗い蝋燭のような灯りの中で見るのが最も美しい、といったことを書いています。明るい光に満たされた現代の生活の中では、なかなかこのようなほのかな光というのは実感しにくいかもしれませんが、時には灯りを暗くして「葆光」を感じてみてるのもいいかもしれませんね。

葆光


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風神雷神蒔絵 時代椀

古くから仏教美術のモチーフとされてきた、風神と雷神。
風神雷神と聞いて多くの人が真っ先に想い浮かべるのは、やはり俵屋宗達の最高傑作とも言われている、建仁寺蔵(京都国立博物館に寄託)の国宝「風神雷神図屏風」ではないでしょうか。後に尾形光琳も、宗達の絵の忠実な模写(東京国立博物館蔵・重文)を残していますね。

当社の時代椀に、この宗達の風神と雷神を金蒔絵で写してみました。筋肉が波打ち、天に躍動する力感に溢れた神々の強烈な姿を、うまく表現することができたでしょうか?

風神雷神蒔絵時代椀
時代椀 黒塗 風神蒔絵・雷神蒔絵 1客 199,800円(税込)


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上塗室で古いアートを発見 !?

当社には上塗室は新旧2ヶ所ありますが、先日古い方の上塗室の改装作業を行いました。長年の汚れを落として壁を新しく塗り直し、今までより明るく作業しやすい部屋になりました。

作業中、部屋の隅にあった古〜い道具棚を引っ張り出して裏面を見たところ、そこになかなか素敵なコラージュ作品が… 

上塗室の古いコラージュ

おそらく昔ここで上塗をしていた職人の手によるものでしょうが、雑誌やカレンダーの切り抜きがベニヤ板の上に無造作に貼られていて、よく見ると結構いい雰囲気になってます。中には若干色っぽい写真もありますね(笑)。

カレンダーの日付を見るとなんと昭和32年!ということは今から60年前。写真の下には今はもう廃線になってしまった能登線の時刻表が貼られていましたが、現在は車で2時間弱の輪島~金沢間の道のりが、当時は汽車で4時間もかかっていたことがわかります。

上塗室の古いコラージュ

それにしてもこれを作った職人さん、まさか60年後にこんな風にインターネットで自分の作品が世界中に公開されるとは夢にも思わなかったでしょうね〜(笑)


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花のデザートカップ

日ごとに暖かさが増してきました。輪島の町をぶらぶら歩いてみても、あちこちに色とりどりの花が咲いています。美しい季節になってきましたね。

というわけでショールームの商品から、こちらは「花型デザートカップ」です。

花型デザートカップ

器の上縁を花びらの形に加工して、食卓にもキレイな花を咲かせてみました。保冷性に優れているのでアイスクリームやぜんざいなどの冷たいお菓子にも適しています。お料理にも、例えばパーティでシュリンプカクテルなどに、和食でしたら珍味入れにも…と、幅広くお使いいただける器です。


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T様邸での蒔絵インテリア制作のご紹介

昨年、多摩市の静かな住宅地にお住いのT様ご自宅の一室に、造り付けの飾り棚の扉と壁面を黒漆塗り・四季草花蒔絵にて改装させていただきました。T様のご快諾をいただき、ご紹介ページを作成しましたのでお知らせいたします。

T様邸T様ご夫妻のご希望・ご指示をお伺いして図案を作成し、2期に渡った取付け工事を経て完成いたしました。
磨き上げられた呂色(鏡面)仕上げの黒漆と蒔絵の金の輝きが、落ち着いたお部屋に豪華さと気品をつけ加えております。ぜひご覧ください。

> T様邸 四季草花蒔絵パネル・扉 のページへ


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東長寺様でのお仕事のご紹介

当社ウェブサイト上では、過去に制作した内装やコラボレーションの仕事を少しずつですがご紹介しております。

今回、多年にわたりご厚情を頂戴しております東京・四谷の萬亀山東長寺様で制作させていただいた作例から、2015年に新築された文由閣での仕事をご紹介するページをアップいたしました。

東長寺文由閣 龍樹堂東長寺様は、かねてより新しい画期的な試みを積極的に実践して、大きな注目を集めてこられたお寺です。当社としても、東長寺様のお仕事を通じて漆の可能性を大きく広げる挑戦をさせていただいており、微力ながらもお手伝いをさせていただくことは大きな喜びとなっております。今回一部ではありますが掲載いたしましたので、その成果をぜひご覧ください。

> 東長寺様文由閣での仕事 のページへ


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漆のスプーン

以前、あるお客様から伺ったお話です。

お客様のお母様が重い病気になり、神経もピリピリして食欲もなかっときに、「魔法のスプーンよ」と言って漆塗りのスプーンを口に入れてあげたところ、お母様はニッコリ微笑んで心が和み、食事も少しずつとられるようになったそうです。お客様はびっくりして、それ以来漆器が大好きになりました、とのことでした。
他にも、むずかっていた赤ちゃんに漆のスプーンを持たせたら途端にご機嫌になった、とお話しされていたお客様もおられました。

漆の優しい肌触り、口触りは、そんな風に無意識に人の心に強く働きかける力があるのでしょうか? 日本人は器を手に持って食事をしますが、長い歴史の中で器を目で見るだけではなく、肌で味わうという感覚も、しっかりと私たちの中に刻み込まれているのかもしれませんね。
漆塗りのスプーンを未体験の方は、その優しい口触りを是非一度味わってみてください。

スプーン大中小


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