東長寺 文由閣

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東京・四谷の萬亀山東長寺は、古い歴史を持つ曹洞宗のお寺です。東長寺様は長年、これからの時代の仏教とお寺のあり方を真剣に模索し、永代供養を先駆けて実施したり、現代美術を支援するなど数々の画期的な試みを積極的に実践して、大きな注目を集めてこられました。
この東長寺様に当社も多年にわたり深いご縁をいただき、微力ながらもお寺の理想の具現化のお手伝いをさせていただいております。

ここでは2015年に造られた、檀信徒会館 文由閣に納品させていただいた品物をご紹介します。


龍樹堂

こちらは納骨堂兼位牌堂の「龍樹堂(りゅうじゅどう)」です。
このお堂では、総数6,000基以上の位牌を安置する位牌壇、平安時代に造られた地蔵菩薩像を安置する厨子、円形の部屋の天井を覆う天蓋などを製作させていただきました。東長寺様のプロデュースのもと、まさに暖かい朱色を基調とした漆の瑞々しさと穏やかな優しさに、身体ごと包まれる空間が完成しました。

東長寺文由閣 龍樹堂
東長寺文由閣 龍樹堂

お堂に一歩足を踏み入れるとまず目に飛び込んでくるのは、円形の壁に沿ってお部屋を包むように配置された位牌壇。
輪島塗でこれほどのスケールのものを造ることは、私たちにとっても前例がなく、大きな挑戦でした。曲面の階段を木という材料で精度よく造るのも技術的に難度が高く、またそれを配置したときにも段にズレが生じないように連結方法にも工夫を凝らし、途中の工程で何度も仮配置しながら、塗りと研ぎの微調整を繰り返して製作しました。

東長寺文由閣 龍樹堂
平安時代後期の作と伝えられる地蔵菩薩像を安置する、六角形の厨子。屋根には勾配を設けず、放射状の天蓋と呼応して天を支え、地に踏ん張るフォルムです。アクセントに金蒔絵が施されています。木地も、木目の通った非常に高品質の材料を使って製作しました。
天井全体を覆い尽くす放射状の天蓋は拭漆仕上げです。見上げたときにゆるやかな曲面を感じられるように、高さを綿密に調整しながら吊り下げました。

東長寺文由閣 龍樹堂
塔婆立てを兼ねた三角形の出入口ブースは、拭漆仕上げ。やわらかい木目と漆の艶が来場者を迎えます。


慈嶽堂

こちらは最上階に位置する法堂の「慈嶽堂(じがくどう)」です。半面がガラスに覆われ、禅寺というイメージを覆すような、明るい外光に満ちた開放的なお堂です。
ここ慈嶽堂に置かれる厨子と須弥壇、焼香台・導師机・香台などの仏具一式を製作させていただきました。

慈嶽堂

平安時代末期の阿弥陀像を安置する宮殿型の厨子は、奈良や京都の古寺建築や古い厨子などを念頭に置きつつ、漆の美しさを際立たせるシンプルな面の構成でデザインしています。屋根の反りや曲線のラインを淀みなく美しく仕上げる技は、塗師・研物師の腕の見せどころです。厨子の内部、金の仏像を際立たせる鮮やかな朱塗りの背板にはうっすらと金蒔絵が施され、やさしく光を投げ返してきます。

慈嶽堂

この厨子と須弥壇の塗り色は、御住職様と念入りに相談して決定しました。写真でははっきりわかりませんが、ほとんど黒に近いのですが完全な黒ではない、微かにブルーがかった色で塗られています。お堂の天井にかかる天蓋は、大分県別府の大橋さんの手による竹細工です。

慈嶽堂

仏具は少し色を変えて少し赤みの入ったこげ茶系の色。白を基調とした明るく開放的な空間に、仏堂らしい重厚感を与え、かつ雰囲気が堅くなりすぎないような微妙な色を調合しました。

慈嶽堂

窓にかかる建具は、石川県七尾市の遠藤さんの製作による組子細工です。夜は建具越しに外の灯りが見え、お堂の雰囲気がガラリと変わります。