根来八角鉢〜優品に学ぶ
前回に続いて、輪島屋善仁 工房展に向けての出品作をご紹介します。
こちらは根来八角杯。根来の数多い名品の中でもなかなかに挑戦的な形です。古えの工人の見事な力量には、改めて感服するほかありませんね。
(写真は株式会社目の眼刊、”朱漆「根来」- 中世に咲いた華”より)
本科は小ぶりな杯ですが、今回はひと回り大きくして鉢として、この凛として美しい器の再現に挑戦しました。
製作を発注した木地屋さんにも、大変ご苦労をおかけして作っていただきました。
布着せが終わった状態です。
この器は稜線や隅が徐々に消えていく部分が数多くあり、このような形は塗り師、研ぎ師が最も気を遣って作業しなければなりません。
こちらは地研ぎが終わったところです。
地研ぎのメン作り一つでも完成品の印象が大きく変わってくるので、器に品格が宿るように、上縁の形や美しい面のつながりに細心の注意を払いました。根来の魅力は長い年月の使用による朱漆の摩耗にありますが、この鉢も時を重ねるごとに、八角の稜線にとりわけ美しい風合いが増してくることを念頭に置いています。