片輪車蒔絵螺鈿手箱 [再現]
[幅307mm 奥行225mm 高さ135mm]
この手箱は、牛車の車輪の汚れを落とし乾燥を防ぐために水に浸している風景を意匠化したものです。平安時代、都の風物詩だったこの景色は工芸の意匠として盛んに用いられましたが、そんなところにも当時の王朝文化の洗練された感覚が偲ばれます。また、片輪車は仏教で極楽の大輪の蓮をあらわすとされており、近年の研究ではこの箱は経箱として造られたと考えられています。
甲盛と胴張のゆるい曲面で構成された形態、巧みに変化をつけて配置された車輪の作るリズム、流麗な筆致、研出蒔絵と螺鈿の高度な技術…と、どれをとっても平安時代のみならず日本の工芸美の極致ともいえる名品です。
原本は平安時代(12世紀) 、国宝 東京国立博物館蔵
写真は「蒔絵Ⅰ」(中央公論社)より